2013年5月7日火曜日

「ボストンへ」ボストン爆破事件について村上春樹氏の寄稿文

まだしつこくボストンでの爆破事件関連です。すみません。(ほかのブログたちでは違う話題も書いてるのでそちらも見てね→ 

4日前のことになりますが、作家の村上春樹さんがNew Yorkerに「BOSTON, FROM ONE CITIZEN OF THE WORLD WHO CALLS HIMSELF A RUNNER(ボストンへ。ランナーを自称する一人の世界市民から)」というタイトルで寄稿されました。

New Yorkerの記事はこちら→
関連の朝日新聞の記事はこちら→

これを読んで、ボストンに住むものとしてじんと来ました。

村上春樹さんはボストンマラソンに過去6回出場されており、ボストンマラソンの持つ独特な雰囲気について書かれています。私はランナーではありませんが、ここで描写されているボストンの雰囲気はマラソン以外にも通じるところがあります。

New Yorkerへの寄稿文を一部引用します。(日本語で書かれたものが翻訳されているそうです。)

Many people were physically injured at the site of the explosions, but even more must have been wounded in other ways. Something that should have been pure has been sullied, and I, too—as a citizen of the world, who calls himself a runner—have been wounded.
爆発現場では多くの人が身体的な怪我を負いましたが、それ以上に多くの人たちが違う面で傷つきました。純粋であるべきものが汚され、私自身もランナーを自称する一人の世界市民として傷つきました。(←junjunの勝手な訳です。)


ああ、そうだ、と思いました。ボストンに住む人たち(そしてボストンの外に住んでいてボストンを愛する人たち)の気持ちがきちんと表されている、と思いました。

今回の爆破事件は自分でもちょっと不思議なくらいにショックでした。単に「近くで起こったから怖かった」というのとは違うし、死傷者の数だけで言えばもっと大きな事件はほかにもたくさんあります。でも、なんというか、心の底からショックだったんですね。

この事件の直後、まだ容疑者が特定されていない時点で、ツイッター等で「アメリカは定期的にテロが起こることを選んだ国」といった声が日本から聞こえてきました。アメリカがこれまで起こした戦争について考えてみれば、テロ攻撃を自ら招いているようなものだから仕方ないじゃないか、ということです。

これを見て私はとても傷つきましたが、外から見ればそういう見方にもなるのでしょうか。また、「たった3人亡くなったくらいで大げさな」という感覚もあるかもしれません。日本の人たちに対して、私たちがボストンに対してもっているこの感覚を伝えるのは難しいなと思いました。

そしてそんな時にこの村上春樹氏の投稿を読み、何かホッとしました。全文は英語でしか読めませんが、日本の方たちにも読んでいただけるとうれしいです。

5 件のコメント:

  1.  ジュンジュン、私も今回の此の事件で,あたかもボストンが危険な街であるかのように報道されることに傷ついた一人です。そして、愛する故郷、福島の人々ことも思いました。
    私もこの村上春樹さんのエッセイを、たくさんの方に読んでいただきたいと思っています。

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    1. ボストンの事件のときに改めて日本の被災地のことも考えました。当たり前のことなのだけど、私と違って東北に個人的なゆかりのある人たちにとってはもう本当に劇的にショックな出来事だった(今も)のだと、改めて思いました。「愛する」土地が被害に遭ったということは、村上春樹さんの言うとおり、physical(身体的・物理的な)傷を負った人たちの数以上に多くの人たちの心の傷となるものね。
      ボストンではこの事件をきっかけに「ボストン愛されてる」と感じることができました。東北の人たちも同じように感じていてくださるとよいのですが。

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  2. 村上春樹さんの記事を読ませていただきました。ボストンの人たちにとってボストンマラソンがいかに大切で特別なものであるのかがよく分かりました。走っている人が故郷にでも帰ってきたような温かみを感じるのですね。素敵な街なのね。それだけに皆さんが負った心の傷はいかばかりかと思います。そうですね。東北の被災地の方々も同じですね。自分の中で風化させないよう思いを巡らせなければと思っています。

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    1. きいこさん、私はもちろんマラソン走ったことないのだけど、アメリカ人の友人が何度か出ていて、一度応援に行きました。彼のお母さんもその時一緒に来ていて(彼女は5Kくらいの短いレースに出てた)、ボストン爆破事件のあと地元のミシガンでボストン応援のためのランニングイベントで走ってくれてました。なんかじーんと来たよ。東北は2年経ってもまだまだ本当に大変みたいですね。人が負った傷のことはすぐに忘れてしまいがちになるけど、忘れないようにしたいね。

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  3. 私も夫も村上春樹ファンなのでNew Yorkerの記事は2人で読ませて頂きました。シェアしてくれてありがとうございます!さすが偉大な作家だけあって、色んな人が思う気持ちをうまく文章に表現されていますよね。私は最後の I hope, too, that the Boston Marathon will recover from its wounds, and that those twenty-six miles will again seem beautiful, natural, free.にすごく感動しました。
    本当にそう思います。

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