2013年5月23日木曜日

Lean In

Facebook COOであるSheril Sandbergの著書、『Lean In』を読みました。

2年前に彼女のTED講演「Why We Have Too Few Women Leaders(何故女性のリーダーは少ないのか)」を見て、彼女のファンになりました。(そのときに書いたブログ記事はこちら→



正直で素直な人だと思ったんですね。そして彼女の話す内容には、全然エリートでない私でも共感できるところがたくさんあります。今回の本もそうです。

Lean inのleanは「傾く、もたれる」という意味で、Lean inは中に入っていく、押し入るという意味です。つまり、女性も職場で控えめにふるまわず、もっと深く入っていこうよ、ということです。

"Don't leave before you leave"(去る前に去るな)とも言っています。これはどういうことかと言うと、実際にまだ子どもがいるわけでもないのに「子どもができたらこの仕事は無理だな」と先に引いてしまうのをやめよう、ということです。中にはまだ結婚もしておらず、ボーイフレンドすらいないのにすでに将来どうやって家庭と仕事を両立させていくか真剣に悩んでいる人もいると出てきます。思い当る人、多いかも。

女性が全員高いキャリアを目指して外でバリバリ仕事をしなければならないとは思いませんが(著者もそんなことは言っていません)、ほかの女性、特にこれからの子どもたちの「足を引っ張る」ような言動はしたくないし、ほかの人たちにもしてほしくないと思います。

私自身、女がバリバリ仕事をするのが普通ではないという環境で育ちました。(アメリカですら女性のリーダー少ないと言っていますが、日本は今だってものすごく少なくて、女性のランク付け世界の先進国中ほぼ最下位ですよね!)それでもなぜか「男女平等」には敏感で(教師という職に就いたからか?)、職場で「女の先生は子ども産んで休むから困るなあ」なんて言う男性教師(その配偶者も教師だったりする)にかっかと腹を立てたりしていましたが、その後教師を辞めた後に就いた仕事はアシスタント的なもの。

日本では男女関係なく経験のない職種で中途採用は難しいということもありますが、無意識のうちに「女だから」そういう仕事を選んでいたのかもしれません。

その後結婚出産して、アメリカに来てみて、ボストンという土地柄もあるのでしょうが、私と同年代の日本人女性でもバリバリ仕事をしていらっしゃる方々の多いのにちょっと驚きました。そして、今からまた20代に戻れるんだったら、今度はもっと勉強や仕事に真剣に取り組んでみたいなと思いました。(真剣に仕事をしていなかったというわけではないのですが、「上に」という意識はなかった。「上に」というのは出世や給料の額だけではなく、やりがいや社会への貢献度も含みます。)

自分の娘のことを話しながら、「この子は女だから頭がよくなくてもいい」というような発言を聞くことがありますが、とても悲しくなります。

女性が専業主婦・ママになるという選択もありだし、女性しか出産・授乳できないことを考えると、少なくとも子どもが小さいときは女性が子育てを主にやることが自然なのかもしれません。しかしそれは各夫婦、各家庭の判断であって、一律にどちらがよいと言えるものではありません。

そういえば、日本で録画して送ってもらった「サザエさん」で、波平さんが「カツオは医者に、ワカメは看護婦さんになったらどうだ」と言うシーンがありました。昔の番組ですが、今でも多少なりとも同じような感覚は残っていると思います。医者や科学者になりたい女の子だっていると思うし、それを応援できるような社会でありたいものです!

あ、そうそう。結婚している女性すべてに役立つアドバイスがありました。

夫が子どものオムツを替えてくれたら、たとえオムツが頭についていても黙っておくように、と言っています。(図書館で借りて読んだので本が今は手元になく、確かめられないのですが、たしかそう言っていたと思う。ちょっと間違ってたらすみません。)

よく、「男は家事(育児)ができない」と言いますが、できないわけじゃないよ、ということです。とにかくやってみないとね。これは私もそう思います。まあ私の場合は文句を言ってしまうことも多いのですが(ごめーん)、言わないでやってもらっていると、そのうちに上手になります。サンドバーグ氏も言うとおり、「女だから」勉強や仕事ができないということはないのと同様に、「男だから」家事や育児ができないということもないんですよね。友だちに専業パパもいますが、すべてしっかりやっています。文句言うよりも黙ってやってもらったほうが、後々楽ですよ。

ところで、本の話とは外れますが、我が家の娘はなぜかとってもフェミニストです。

ある日夫が「どこかの村では14歳になると男はライオンと戦わなければならなくて、ライオンに勝った者だけが大人と認められ、結婚を申し込むこともできる」という話を私にしていたら、聞いていた娘が「なんで男だけ? 女はできないの? 女は家で待ってるだけなの?? 私は外に出て、自分で結婚相手を探しに行く!」って。まさかライオンと戦いたいわけではないでしょうが(笑)、不平等を感じたかな。

また最近はピンクの服やスカートは断固拒否! 絶対にパンツを履いていきます。

こういう娘の態度を見ていると、「男女平等!」と言っている私だって、知らない間に「女の子らしく」育ててたんだなーと気づきます。ピンクの服とかいっぱい買ってたもんね。それに服装などではアメリカのほうが男女差顕著かも。中間的な服(特に子ども服)はほとんどなく、ショートカットの女の子もほぼ見かけませんね……。(まあ個人的には服装などは思いっきり女っぽくてもなんでも個人の好みでよいと思っているのだけど。)

そして、うちの夫P。彼はかなり男女平等な人です。

独身時代、我が家に遊びに来たとき、ベランダで虫が死んでいたので拾って捨ててくれと頼んだら、「そうやって性別で役割を決めるのはやめようよ」と言って拾ってくれなかったくらい男女平等主義です。虫が怖かったのかもしれませんが(笑)、男性だって虫が怖いなら怖いと言ってもいいし、主夫したいならすればいいんですよね。

まあ虫の件は置いておいても、Pは私にも仕事をしてほしいと思っているし、家事もできるだけやりたがります。(「手伝う」という感覚でなく、自分も「やる」というのがポイントね。)

こういう人と結婚してよかったなーとつくづく思います。(私の場合、そうでなかったら結婚してないだろうけど。)

サンドバーグ氏の本、近々日本でも翻訳書が発売されるらしいので、ぜひ読んでみてください。キャリア志向の人もそうでない人も興味をもって読める本だと思います。

あ、そうそう。男性も読んでみてね!

2013年5月21日火曜日

「よい学校」とは?

今夜、Pが市のSchool Committeeのミーティングに行ってきました。

簡単に言うと「人気のない学校にSchool Committeeが大きく介入して、大幅なプログラム変更などを可能にする」という動議が出され、学校をサポートするために(この動議を阻止するために)行ってきたのです。

我が市は学区が細かく分かれておらず、市内の公立学校をどこでも選べるようになっており(ボストン市と同じ方式)、第3希望までを出して抽選で学校が決まる仕組みになっています。

うたこが通っている学校はうたこの伯母さん(Pの姉)が校長をしていますが、実はあまり人気のある学校ではありません。(第一希望に選ぶ親が少ない。)

私を含め、この学校の親たちが考え付く不人気の理由は以下のとおり。
・ニーズの高い生徒(移民のため英語が不十分、貧困家庭から来ているなど)が多い。
・そのためにテストのスコアなども低い(確かめてないけれど、たぶん)。
・そのために親の参加度も低い。
・人種の偏りがあるため、白人家庭には人気がない。
・コミュニケーションが悪い。(よい内容がたくさんあるのに情報が発信されていない。)
・理由はわからないが、市のFamily Resource Centerが親たちにこの学校を避けるよう指導している。(←という証言がいくつかあり)
・Parent liaison担当者があまり熱心でない。(学校を選ぶ際にほとんどの親がスクールツアーに参加するので、この担当者の仕事ぶりは重要ポイント)

うたこはこの学校にJK(Junior Kindergarten)から通い、今はKinderで2年目です。去年の先生も今年の先生も素晴らしく、子どもはたくさんのことを学んでいます。入ったときはもちろん読み書きできませんでしたが、今では本も一人で読めるようになり、答えが2桁になる足し算でもできるようになりました。家庭が貧しくてあちこち連れて行ってもらえない子たちにもいろんな経験をさせたいという先生たちの意向でフィールドトリップも多く、地元の消防署からサーカス、劇やコンサートまで、いろいろなところに連れて行ってもらっています。また、ハーバード等の大学と連携した活動もあります。

市内のほかの公立学校でも同様のことはやられていると思いますが、人気がないとされているうたこの学校だって負けないようなよいプログラムがあるよ、ということです。(ほかの学校に通わせたことがないので確実なところはわかりませんが、たぶん。)だからこの動議は不人気の理由がよくわかっていない、的外れなものであると言えます。

正直なところ、うたこの学校のランクが低いと知ったとき(入って直後だったと思う)、ここでいいのだろうかとも悩みましたが、今はこの学校でよかったと思っています。

これはほかの親たちも同様なようで、前日に声をかけたにも関わらず50人が今夜のミーティングに集まり、この動議に対する反対を訴えました。

実はPTO(PTAと同じです)も休眠状態だったのですが、去年あたりから順調に参加者が増え、9月からの来年度はもっと本格的にいろいろやっていこうとしているところです。PもTreasurer(会計)で頑張っています。

「よい学校」って何かなあとよく考えます。

偏差値の高い学校や問題のある子の少ない学校=よい学校と考える場合もあるでしょうが、私は自分の子どもには多様性のある生徒たちの中で学んでいってほしいと思っています。学校って勉強だけでなく、社会のことをいろいろと学ぶ場所ですから。

「よい学校」というのはその子によって違うとも思いますから、うたこの今の学校がどの子にとってもよい学校とは思いませんが、うたこは喜んで通っているし、ちゃんと勉強もできているので、この学校がうたこにとってよい学校でない理由は見つかりません。

うたこの学校での様子については、別のブログでよく書いているので、そちらで→

とりあえず問題の動議については、多くの親が駆けつけて反対を表明したこともあり、今回おそらく否決されそうです。

PTOの活動については、おそらくまた別に書きます。今、作り上げているという感があって、なかなかエキサイティングです。

2013年5月7日火曜日

「ボストンへ」ボストン爆破事件について村上春樹氏の寄稿文

まだしつこくボストンでの爆破事件関連です。すみません。(ほかのブログたちでは違う話題も書いてるのでそちらも見てね→ 

4日前のことになりますが、作家の村上春樹さんがNew Yorkerに「BOSTON, FROM ONE CITIZEN OF THE WORLD WHO CALLS HIMSELF A RUNNER(ボストンへ。ランナーを自称する一人の世界市民から)」というタイトルで寄稿されました。

New Yorkerの記事はこちら→
関連の朝日新聞の記事はこちら→

これを読んで、ボストンに住むものとしてじんと来ました。

村上春樹さんはボストンマラソンに過去6回出場されており、ボストンマラソンの持つ独特な雰囲気について書かれています。私はランナーではありませんが、ここで描写されているボストンの雰囲気はマラソン以外にも通じるところがあります。

New Yorkerへの寄稿文を一部引用します。(日本語で書かれたものが翻訳されているそうです。)

Many people were physically injured at the site of the explosions, but even more must have been wounded in other ways. Something that should have been pure has been sullied, and I, too—as a citizen of the world, who calls himself a runner—have been wounded.
爆発現場では多くの人が身体的な怪我を負いましたが、それ以上に多くの人たちが違う面で傷つきました。純粋であるべきものが汚され、私自身もランナーを自称する一人の世界市民として傷つきました。(←junjunの勝手な訳です。)


ああ、そうだ、と思いました。ボストンに住む人たち(そしてボストンの外に住んでいてボストンを愛する人たち)の気持ちがきちんと表されている、と思いました。

今回の爆破事件は自分でもちょっと不思議なくらいにショックでした。単に「近くで起こったから怖かった」というのとは違うし、死傷者の数だけで言えばもっと大きな事件はほかにもたくさんあります。でも、なんというか、心の底からショックだったんですね。

この事件の直後、まだ容疑者が特定されていない時点で、ツイッター等で「アメリカは定期的にテロが起こることを選んだ国」といった声が日本から聞こえてきました。アメリカがこれまで起こした戦争について考えてみれば、テロ攻撃を自ら招いているようなものだから仕方ないじゃないか、ということです。

これを見て私はとても傷つきましたが、外から見ればそういう見方にもなるのでしょうか。また、「たった3人亡くなったくらいで大げさな」という感覚もあるかもしれません。日本の人たちに対して、私たちがボストンに対してもっているこの感覚を伝えるのは難しいなと思いました。

そしてそんな時にこの村上春樹氏の投稿を読み、何かホッとしました。全文は英語でしか読めませんが、日本の方たちにも読んでいただけるとうれしいです。