著者の御手洗瑞子(たまこ)さんという方はブータン政府 Gross National Happiness Commission (GNHC)首相フェローをなさっていた方で、現在は「ほぼ日」から生まれた「気仙沼ニッティング」の社長をされている(→★)というあたりのことをネットで読んで知っていて、この本読んでみたいな~と思っていたところ、日本語学校の図書館で見つけたので借りてみました。
うーん、おもしろい!
ブータンという国はもちろん行ったことがないし、これまで行ったことのあるどの国とも違っています(多少シンガポールの人と似ているなと思う点はある)。でも単に「珍しい」という意味でおもしろいのではなく、たまこさんの分析がとてもおもしろいのです。
そして彼女の分析は単におもしろいだけでなく、するどいところもたくさんあります。ブータンの人たちの観察日記でありながら、時々鋭い分析が出てくるところなどはさすがコンサルです。
たとえばブータン政府はGNH(Gross National Happiness:国民総幸福量)という概念を掲げていて、国民の幸福度が高い国です。でもたまこさんの分析では単純にブータン=幸せの国というわけではなく、「ブータンの人たちが幸せなのは幸福を感じる力が強いから」だそうです。うんうん、確かにどこに住んでも何があっても不幸そうな人もいれば、大変な環境でもニコニコしている人もいますよね。
(そういえば、夫の義父の奥さんはフィリピン人なのですが、フィリピン人も幸福を感じる力が強いとどこかで聞いたか読んだかしたことがあります。昔仕事で一緒だったフィリピン人が故郷の洪水の話をしながら「家が流れてもいいのさ。また建てればいいんだから!」がはははは~と笑っていたのを思い出します。)
そして「幸せの国」ブータンも皆幸せで万々歳というわけではなくて、問題もたくさんあります。そのあたりのたまこさんの分析も鋭いし、鋭い中にも温かさがあって、そこがまたよいです。
この本読むと、自分のことも「これでいいのだ」と思えてきます(笑)。
なるほどなあ~と思うところはたくさんありましたが、一か所だけご紹介。
たまこさんの元上司の方の言葉です。(以下抜粋)
「幸せになろうと思ったらね、自分の幸せを願ってはいけないんだ。自分の幸せを探し出したら、どんどん、幸せから遠ざかってしまうよ」
「幸せを願うのであったら、自分の幸せではなく、周囲の人の幸せを願わなければならない。家族だとか、友人だとか、自分の身近な大切な人たち、そして周りの人たちが幸せでいられるように、できるかぎりのことをするんだ。……人のためになにか役に立つことをして、相手が幸せになるのを見ると、自分にもとても大きな満足感が返ってくるんだよ。それは、自分のためになにかしたときより、ずっと大きな満足感なんだ。……」本当にそうですね。自分の幸せ(出世したい、お金持ちになりたい、結婚したいなど)ばかり追い求めていると手に入らなかったときに落胆したり、人を羨んだりして幸福からどんどん遠ざかり、逆に「不幸度」が上がってしまいかねません。
手元に置いておいて、時々自分への戒めも込めて読みたい本です。(図書館で借りたので返さないといけないのですけどね。)「戒め」なんて厳しい言葉を使いましたが、この本はくすくす笑いながら読める本。ほんわかした気持ちになれます。
たまこさんのブータン時代のブログ記事はこちら→★
「ほぼ日」でブータンのことを語るたまこさん→★
「ほぼ日」黄昏 ブータン編(糸井重里さんと南伸坊さんがブータンへ。でもこの方たちはブータンとは関係のない話ばかりしています。笑)→★
ブータン、一度行ってみたいです。いつ行けるかわかりませんが、行きたい場所リストに加えておこう。